人は大人になるとわがままが通らなくなる。
自分の思い通りにするためには他人を説得しなければいけない。
だが論理的に物事を考えられる高学歴、特に理系民であっても説得することを非常に苦手としている人も多い。
今日はなぜそのようなことが起きるのか解説し、説得の場面で役立つ考え方を共有したい。
ちょっとした意識の変化で相手の行動が変わること間違いなしだ。
■説得できるかどうかは情熱と論理の掛け算で決まる。
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ただ漠然と良くなる方法を考えてもらちが明かないので、説得に必要な要素を2つに分解する。
それは感情と論理だ。
・感情が説得に有効な例
相手の感情を揺さぶることができたら説得できる確率は高まる。
これは感覚的にも納得感があるだろう。
あまり縁起のいい例えではないが振り込め詐欺がこれを利用している。
「子どもや孫が大変な目にあっているから、自分が何とかして助けてやらないといけない。」
そういう気持ちを起こさせて、振り込みをさせているのだ。
・論理が説得に有効な例
もう一つは論理だ。
振り込め詐欺の例でいえば
- 出張先で会社のお金が入ったカバンを忘れてしまった。
- お金を今日中に用意しないといけないといけないが、遠方なので取りに行けない。
- 来週になったら必ず返せるから立て替えてほしい。
というように、「今日中にお金を振り込む必要性」「お金は返ってくるという安心感」を論理的に組み立てて「自分以外にお金を用意してあげられる人がいない」と思わせている。
これらがもし、「知らないおじさんからの電話」で「来年までに振り込んでほしい」だと、感情は動かないし、そんなに時間あるなら自分が用意しなくても会社で何とかできるでしょ、と思われて論理も成立しない。
感情と論理、どちらかが足りていないと説得はできないのだ。
■説得が苦手な理由は論理だけ話すから
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高学歴、特に論理的に物事を考える理系民でも説得を苦手としている人が多いのはこの感情の部分が抜け、論理だけで説得しようとしているからだ。
たとえば以下のような賭けを考える。
- 50%の確率であたりがでて賞金100万円
- 参加費は10万円。
- この賭けには最大40回参加できる。
期待値を計算すれば
(0.5×90万円)+(0.5×-10万円)=40万円
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となり、参加者に有利な賭けである。
この賭けに40回参加すれば、40回の損益合計がマイナスになる確率は約0.034%でおよそ3000分の1。
これは17歳の日本人男性が1年以内に死亡する確率にほぼ等しい。
論理的に考えれば参加したほうがいいことは明白で、この論理を説明できれば全員説得できるように思える。
しかし、この賭けに乗るという「経済合理的な」判断をしない人は一定数いる。
50%の確率で10万円を失うという損にばかり気をとられ、総合的に物事を見られないからだ。
人は論理的に行動していると決めつけて、論理だけで説得しようとするのは間違いなのだ。
■感情で動く人に論理で説得はできない。
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対して、宝くじを買う人は大勢いる。
たとえばロト6だと以下のような期待値の計算になる。当せん金はキャリーオーバーや当せん本数によって変動するので見込み当せん金額とした。
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はずれたときの損失は小さいが、期待値はマイナスとなり、買えば買うだけ損を大きくすることが分かる。
だが、宝くじを買う人の多いこと。
少ない出費でわずかだが大金持ちになる可能性を買うことができる。
そういった気持ちに駆られて宝くじを買ってしまうのである。
これは人間が論理ではなく感情で行動していることの表れである。
こういう人たちに宝くじは儲からないことを論理で説いても意味はない。
もともと論理で動いていないのだから。
これはルフィに「今まで何百回と航海されてきた安全安心なルートで旅をしよう。」と言っているに等しいのだ。
■人間は論理100%でもなければ感情100%でもない
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このような話をすると「じゃあ感情にだけ訴えかければいいのか!」と極端な思考に陥る人がいるが、そうではない。
冒頭にお伝えした通り論理も必要。
その理由は論理が感情の一部を構成しているからだ。
先の宝くじの例でいえば宝くじを購入する人の中には
- 1枚200円という少ない金額で済む
- 当せん時の金額は最大約2億円と大金で、贅沢しなければ一生暮らせる。
という2つの論理はあるのだ。この2つの論理が「わずかなリスクで人生を変えられるかも」という感情を呼び起こしている。
これがもし、
- 購入金額は1枚1万円
- 当せん時の金額は最大200万円
だったとすると、購入金額は少額ではないし、当せん金額も一生どころか1年で使い果たしてしまう額だ。
すなわち「わずかなリスクで人生を変えられるかも」という感情は惹起されない。
感情にも論理にも訴えかける訴求ができて初めて説得できるのだ。
■大組織はほぼ論理で決まる。
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ここまでで、説得には論理と情熱が必要というお話をしてきたが、実は大きな組織になればなるほど難しい。
営業マンが自社商品を株式会社に営業する場面を考えよう。
営業される株式会社の担当者はその取引が将来的に会社に利益をもたらすかどうかを考える。
株式会社の所有者は株主で、株主たちは株の値上がり(キャピタルゲイン)もしくは安定的な配当(インカムゲイン)を期待している。それらに必要なのは会社が安定的に利益を上げたり成長したりすることだからだ。
経営陣は株主たちに無能(=株主にお金を還元する能力がない)と思われたらクビにされるので、利益の確保に必死になる。
つまり、利益をもたらしてくれるなら情熱などなくてもGOだし、利益が見込めないならどんなに情熱があってもNOなのだ。
ある程度の規模の会社なら契約時に稟議を上げる必要があり、社長ないし役員の承認がいる。
役員以上なら基本的にこのロジックは持っているはずなので、「将来的に会社に利益をもたらすかどうか」という論点をクリアしているかどうかが最重要なのだ。
■情熱を伝えるために、演技も有効
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ドラマなどでも主人公が結構アツく説得している場面は多い。
半沢直樹などはいい例だ。
正直傍(はた)から見ていると「何アツくなっちゃってんだろう」と思うこともあるのだが、これが当事者、本気で説得される側になると意外に心が動くものなのだ。
日常の中で、ちょっとここは自分の意見を通したいなと思ったとき、少しアツく説得してみるのをお勧める。
たとえば友達と遊びに行く場所を決めるとき、自分の行きたい場所に行こうと説得するとする。
そこで「○○は~~って良さがあってめっちゃいいんだよ!想像と全然違うから一回行ってみようよ!」などのように少しテンションを上げて言うだけだ。
私はこれを試したとき、驚くほどあっさり「あ~じゃあそこにする?」と決まった覚えがある。
情熱を伝えるための演技、かなり有効である。
■まとめ
説得の技術、営業マンでなくても日常生活でだいぶ役に立つのでぜひ試してみていただきたい。
きっと後悔はしない。
以上。
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